phoenix299号 PDF299


■主な記事から■


▼将来的に整備士不足が予想、整備士の労働環境改善が急務
▼JALは圧倒的に高い自己資本比率で高業績(第一四半期決算)しかし、利便性収入構造に課題
▼誰のための安全か、何のための解雇かシンポジウム「8・10明日への誓い」に 600人
▼日東整不当解雇撤回裁判
▼JALのマタニティーハラスメント裁判で本人が意見陳述
▼おいこまれる安倍政権8月30日に戦争法案反対、全国 100万人一斉行動


 客乗連絡会は厚生労働省(8月24日)と国土交通省(8月25日)に雇用と勤務の改善について要請しました。要請内容は、@アリタリア航空(AZ)とデルタ航空(DL)における契約制客室乗務員の雇い止め問題の解決、Aすべての客室乗務員の正社員採用、B労基法違反の勤務実態の改善、の3点です。

 要請の@とAについては、AZが本国の客室乗務員を正社員採用としながら、日本支社では2006年以降、正社員登用制度をなくし1年契約上限3年〜5年の契約制としている問題です。妊娠休職中に契約3年で雇い止めされた乗務員は、同期や後輩が3年後も契約更新されているなかでの雇い止めは納得できないと裁判に訴えています。この件についても問題提起を行いました。
 DLでは正社員の他に、1年契約をくり返す雇用形態の客室乗務員がいますが、サービスと編成数削減を理由に5名が契約途中に契約解除(解雇)されました。ワークシェアや一時帰休等の検討すら行わず、DL日本支社長は5名の雇い止めについて団交で、「1年契約なのだから雇い止めは問題ない」との驚くべき発言をしました。このスカイチーム2社での安易な契約制客室乗務員の切り捨ては、労働契約法19条(注1)に反し、18条(注2)の趣旨からも逸脱する行為です。客乗連は、こうした有期雇用をなくし、諸外国や日本の一部の航空会社と同様に、客室乗務員は全員、正社員として採用を行うよう、関係各社に対し指導を行うよう要請しました。

 国土交通省には要請文を提出、職場の実態を訴える要請行動は来月あらためて行う予定です。この要請文の中で、AZにおける保安訓練未実施の問題も提起しました。AZでは日本人乗務員を「通訳」として採用したとして、ICAOで規定された保安訓練を実施していません。しかし現実には編成内のクルーとして、乗客の7〜8割が日本人のお客様である機内で、サービスをイタリア人乗務員と同様に行っています。急病人のケアや緊急時のアナウンスも行っています。彼女たちは実質「客室乗務員」であり、本来保安訓練を行わなくてはならない状況にあります。「通訳」というのであれば、かつてのNW航空のように編成外としてサービスは実施させず、「通訳」のみとする必要があります。客乗連は乗客の安全確保の観点から、訓練された日本人客室乗務員を乗務させるべきとの立場です。

 また、諸外国で実施されている客室乗務員への国家ライセンスの付与について申し入れました。

 要請のBについては、労基法34条施行規則32条に則り、国内線と近距離国際線において、勤務時間6時間を超えた場合45分以上、8時間を超えた場合1時間以上の、機内における「みなし休憩時間」を付与するため、便間での清掃作業を業者に委託するなど、各航空会社への是正指導を行うよう申し入れました。

 厚労省労働基準局担当者は、「有期雇用から無期雇用にして安定を図ってほしい。無期雇用に転換している企業名を公表し、キャリアアップ助成金を来年度も引き続きやっていく」と応じました。

 注1 「正社員と同様の仕事を行うなど、契約更新を期待することに合理的な理由があり、過去に何度か更新された場合、簡単には雇い止めできない。(会社が更新申し込みを拒否する場合は、整理解雇4要件に相当する理由が必要)」
 注2 「2013年4月1日以降に契約した労働者が契約期間5年を超える場合、会社に無期雇用への転換の申し入れを契約期間内に行った場合、会社はその申し込みを承諾したものとみなす」

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将来的な整備士不足が予想されています。ICAOは、2030年にアジア太平洋地区で約29万の整備士が必要と試算しています。航空会社にとって整備士の養成は喫緊の課題になっています。

  航空連整備連では、各労組の整備関係者が定期的に集まり、航空機整備の現状分析と課題について議論しています。昨今の政策課題のひとつが勤務問題です。将来的な整備士不足を見据えてか、各社では整備士の稼働強化を狙った勤務改悪が相次いでいます。
 全日空は8月から、成田空港で運航便の整備を行う現場の夜勤を17時〜05時の勤務にし、休憩2時間を1・5時間に見直しました。地方空港では整備作業が翌朝まで続き、車両事故を引き起こした事例もあります。
 日本航空の整備グループ中期計画は今後の整備士不足に対応し、5年間で500名のライン確認主任者養成と、一人で2機種程度の資格拡張が必要としています。
 定期的に飛行機を格納庫に入れ整備する機体整備の現場では、人員不足のため恒常的な残業が続いています。日航ユニオンの「忙しければミスを誘発する」との指摘に会社は、「多忙感があることは認識している。年休、教育、いろんな施策を充てる工数も組んだうえで作業計画を立て直している」と応じました。 一方で、整備間接業務の職場では、時間外に旅客業務をお手伝いするボランティアを募集しています。労基署は、「ボランティアでの仕事はありえず、管理職は社員の勤怠管理義務がある」と指摘します。
 整備ミスの要因の一つに経験不足があります。以前は1人の新人に1人のベテランが付き、工具の使い方から作業の進め方まで指導していました。今はそうした人的余裕がなくなっています。

 整備連は「若い整備士が希望を持って働き続けられる労働環境をつくるためにも、賃金とともに、安全と健康を守れる勤務など労働条件の改善が課題」と話します。
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2015年3月期決算を含め、JAL再建後のJAL・ANA両グループの傾向は変わらず第1四半期決算でもその特徴が際立ってきています。
 JALは、優遇策で得られた財務面での強みから、特に費用面での優位性を保ち続けています。

航空会社が抱える課題(上)

 慎重な投資姿勢、切り下げられた人件費のコスト面での強みの一方で、事業規模縮小が総収入の差だけでなく、単価や単位比較など個々の営業数値でもANAに勝てていない特徴が目立ってきています。
 圧倒的な自己資本比率を誇ってはいますが、費用を抑える経営方針が利便性や収入構造といった競争力そのものに響いていると言えるでしょう。
 ANAの特徴は、世界でも類を見ないJALの圧倒的な利益体質の陰で見えにくくなってはいますが、特に国際線での強気な拡大方針が今のところ出来過ぎとも言える実績を残してきています。
 引き続き多額の借金が最大の弱点であり、中東呼吸器症候群MERSやテロ等の国際イベントリスクが発生した場合の破綻シナリオへの備えが不十分だと言えます。
 大量機材発注による資金調達、過去に出し抜き的に実施した増資、国際イベントリスクへの懸念など、もし資金繰りに苦しむ場面に至った際の「第2プラン」が欠如しているのです。

 第1四半期決算比では、JALの営業利益は362億円、ANAは167億円、手元に残る当期利益はJAL326億円、ANA83億円でした。

 JAL優遇策とは財産評定による機材減価償却費用の圧縮、借金棒引きによる支払利息の軽減、法人税減免などでした。
 減価償却費はJALが215億円に対し、ANAは326億円ですが、優遇策の影響に加えてANAの急激な機材購入があります。
 法人税はJALが51億円、ANAが74億円で、実質上無借金のJALは支払利息より受取の方が多く収入は7億円、ANAの支払い利息費用は31億円でした。

 両グループの事業拡大ペースの違いはありますが、第1四半期決算の約172億円はJAL優遇策との関係と言えます。

 最も注目すべきは事業内容の対比です。

 まず目立つ差は内際とも単価です。ANAが国内線796円、国際線7943円、JALより高位です。

 国際線の旅客数がJALの方が多いのは、移動距離の短い旅客比率が高いことを示しています。

 また、利益最大化ビジネス戦略であるレベニュー・マネジメント比較でも、収入単価イールドや座キロ当たりの収入単価ユニットレベニューは、内際ともANAがJALを上回る指標には注目すべきでしょう。

 一方、営業費用に占める燃油費の割合はJAL21・7%、ANAが20・1%、またJALの人件費率22・2%に対し、ANAは18・6%となっています。

 人件費を抑え燃油費の割合が高いのはLCCの特徴であり、両社ともにそうした傾向がうかがえます。

 一人あたりの人件費はANAが上回りますが、人件費率はJALが上回っているのは事業規模の差が本質なのです。

 次号では新興航空会社とLCCです。

 (つづく)
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 JAL123便事故から30年を迎えようとする8月10日、JAL不当解雇撤回国民共闘会議主催のシンポジウム「8・10明日への誓い」が都内で開かれました。600人の参加があり、会場は熱気に包まれました。マスコミも大きく取り上げ、空の安全と遺族の方々の証言などを紹介しました。争議団はシンポジウムで、123便事故を契機にJAL経営者が約束した「絶対安全を実現する4つの誓い」がどうなったのか、165人の整理解雇はなぜ強行されたのかを議論し検証しました。シンポジウムのコーディネーターは新聞労連中央執行委員長の新崎盛吾さん。ジャーナリストの安田浩一さん、JR職員の田中博文さん、客室乗務員の内田妙子さん、機長の飯田祐三さんらがパネリストとして、それぞれの立場から安全と労使関係について発言しました。

 第1部は映像「明日への誓い」の上映。連続事故の歴史を振り返り、123便事故後に絶対安全を誓ったJALが結局はその誓いを忘れ破綻し、罪のない労働者を解雇しました。そして、JAL経営が誓った4つ(絶対安全の確立、現場第一主義、公正明朗な人事、労使関係の安定・融和)の約束を履行させ、安全な運航と明るい職場を築くためにみんなで考えていかなければならないと提起しました。
 引き続き、パネリストから発言がありました。
 安田さん。「今朝、取材先の沖縄から東京に戻ってきた。飛行機が到着し出発するまでの時間が大変短くなっており、あわただしく働く人たちを見て驚いた。取材を通して、コスト削減が優先され、業務の外注化で現場の力が衰えていくことを見てきた。かつてJRではスローガンとして、安全より先に『カセグ』があった。とにかく急げ、とにかくカセグで、安全が置き去りにされた。日勤教育と称する労働者いじめが横行し、恐怖政治が行われた。公共交通機関の労働組合は、何のために誰のために運動するのかを皆さんと考えたい」

 田中さん。「国鉄再生とJAL再建で共通していることは組合つぶしだ。JALの放漫経営、行政の杜撰さなどが映像で紹介された。国鉄分割民営化のときには、28兆円の負債があった。これには、新幹線開業資金の借り入れや、我田引鉄と言われた地方線建設での利益誘導などがあった。利益なくして安全なしというのは間違っている。事故が起きると労働者に責任転嫁し、事情聴取や日勤教育が繰り返された。そこには安全への配慮はなかった」

 内田さん。「1975年から乗務し、いくつかの事故を経験し同期も犠牲となった。経験から事故は防げたと信じている。事故の背景には必ず営利優先の施策があった。そして、分裂労務政策で組合つぶしが行われた。客室乗務員の仕事を続けていけばいくほど、命を失う仕事であることを知った。だからこそ何をすべきかを考え、組合活動にも積極的に参加してきた。保安要員の仕事には、会社の教育だけでは不足している。先輩や仲間から話を聞き、組合発行の事故追悼のニュースや冊子を読み、学習会に参加して勉強してきた。だから、30年以上もこの仕事に向き合えてこれた」

 飯田さん。「123便事故で何が変わったのか。パイロットの仕事は安全を守りきることである。それには労使の信頼関係が不可欠である。JALの連続事故を振り返ると、経営者が営利に走り、合理化を行なったときに発生している。123便のときもそうだった。事故後、機長の組合活動も可能となった。その後人身事故が起きていないことは、明るい職場と民主的な労働組合の存在が重要であることを示している。稲盛氏の『御巣鷹事故は社員のトラウマ』発言は、航空経営者として、安全運航への姿勢が問われる」

 第2部はパネリストによるクロストーク。コーディネーターの新崎さんから、安全問題や労使問題を中心にテーマがだされ、パネリストが答えました。会場からの質問にも答えながら進みました。

 最後に、声明文「8・10明日への誓い」を採択してシンポジウムは閉会しました。アンケートには、「コスト削減を考えるのはやむをえないとしても、安全はそれ以上に大切だ。乗客の一人として経営者に安全第一を考えもらいたい」「JALの問題ではなく、日本の労働組合のおかれている現状を考えさせてくれる集会でした」などの声がたくさん寄せられました。

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 日東整不当解雇撤回裁判は、東京高裁の控訴棄却(6月24日)の不当判決を覆すために7月6日に最高裁に上告し、8月28日に上告受理申立理由書を裁判所に提出しました。

 この理由書では、東京高裁の労働組合法7条の使用者性判断の誤りを、日東整と日本航空との支配従属関係の実態と事実から反論した内容です。また、裁判の根幹である日本航空の整備部門の再編・統合から日東整だけを排除したのは、日東整労組とその組合員らが日本航空内の民主的な労働組合と大同団結することに危機感を持った日本航空が日東整を会社ごと潰した事。そこで働いていた従業員全員の雇用を奪った日本航空の行為は、不当労働行為意思が強く働いていたことを、日本航空の社内文書を基に東京高裁の判断の誤りを正す内容です。

 日東整争議団は、最高裁宛の団体と個人の署名を取り組んでいます。そして、毎月、東京争議団が主催する共同での最高裁前での宣伝と要請行動に積極的に参加して、東京高裁での判決の見直しを強く求めて行きます。

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 妊娠中の地上勤務を拒否され、無給休職を余儀なくされた日本航空の客室乗務員の神野知子さんが、男女雇用機会均等法や労働基準法に違反するマタニティーハラスメント(マタハラ)だとして、休職命令の無効と未払い賃金などの慰謝料を求めた裁判は、9月2日に東京地裁で第1回裁判が開かれ、本人が意見陳述します。

 JALマタハラ裁判は、女性の働く権利面から人権問題として注目されており、提訴当日はテレビ局6社、新聞8社からの取材を受けました。海外のフィナンシャルタイム紙では7月第2週号でJALマタハラ裁判を報道しました。日経新聞は、米国務省が6月25日に発表した世界各国の人権状況に関する年次報告書で「日本について職場のセクハラが引き続き横行し、妊娠・出産を機に嫌がらせや差別を受けた女性からの申し立ても増えているとして『マタハラ』に言及した」と報道。
 原告の友人らによって「未来の飛んでるママを支える会」が結成されました。客室乗務員が安心して働き続けられるために、この裁判に勝って制度改善につなげたい、と会員を募集しています。
 事務局長の茂木さんは「安倍政権は『女性が輝く社会に』と、女性の活躍推進法案を作成し、重点項目の環境整備では、マタハラ撲滅とはっきりと謳っています。JALは2008年、2013年にくるみんマーク=i※1)を取得、2014年にはなでしこ銘柄(※2)も取得し、女性が働きやすい職場、活躍できる職場と宣伝していますが実態が伴っていません。マタハラがある企業は男女ともに働きにくい環境だそうです。航空業界のトップ企業として、名実ともにハラスメントのない会社になって欲しい」と話します。

「支える会」連絡先

03―5756―0888(CCU気付)

E−MAIL 2015flingmama@gmail.com

(※1)くるみんマーク 次世代育成支援対策推進法に基づき、行動計画の目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定。
(※2)なでしこ銘柄
 経済産業省は、東京証券取引所と共同で、2012年度より女性活躍推進に優れた上場企業「なでしこ銘柄」を選定し、発表しています。

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 安倍政権が今国会で成立を目指す安全保障関連11法案と労働法制改悪。いずれの法案も今後の私たちの将来に重大な影響を及ぼします。加えて世論調査では6割近くが反対する原発再稼働を強行。安倍政権ノーは、延長国会終盤を迎え戦争法案・労働法制改悪案の廃案に向けた反対行動が全国に広がっています。

 労働法制改悪では、正社員ゼロ法案と言われる「派遣法改悪」、そして残業代ゼロ法案と言われる「労働時間法制改悪」。派遣法改悪案は、3年ごとに派遣労働者を入れ替えれば、派遣期間の延長が可能です。派遣料は消費税課税の対象にならないことから、正社員の派遣社員への置き換えが進む懸念があります。
 前号でも紹介しましたが、塩崎厚労大臣は、日本経済研究センターの会員会社・社長朝食会で「小さく産んで大きく育てる」と、制度の狙いと本音をあけすけに語っています。法案成立を許すわけにはいきません。
 さて、安全保障関連11法案の廃案を求め全国の老若男女が様々な反対行動に取り組んでいます。学生らでつくるSEALDs(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)によると、「安保法制に反対する若者発のムーブメントが全国に広がりつつある。若者だけじゃない、ママたちもおじいちゃんたちも学者も立ち上がっている。これはすでに、国会前の話だけじゃない。全国の、全世代の、アクションだ」

 8月後半には若者みずからが呼びかけた行動が取り組まれます。また8月30日には、「総がかり行動実行委員会」が呼びかける「国会10万人・全国100万人大行動」が取り組まれました。
 政治的な発言がタブー視されがちな芸能界でも、落語家やコメディアンら笑いのプロが「芸人9条の会」を立ち上げました。
 民意を無視し、独裁政治化した安倍政権の退陣を求める声も強まっています。
 航空連は、民間航空の軍事利用のリスクが高まる戦争法案に反対です。

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お詫びと訂正

 297号2面「アリタリア 妊娠休職中に雇止め」の記事で「アリタリア航空(AZ)は大阪便減便を理由に2名を、さらに基地閉鎖を理由に8名の、計10名の雇い止めを強行しました。10名全員が労働審判で闘い8名は和解が成立。1名は裁判に進むことになり、1名は労働審判の審議が続いています」とありましたが、一部誤りがありましたので、以下のとおり訂正いたします。

 「アリタリア航空(AZ)は大阪便減便を理由にJCC組合員2名を、さらに基地閉鎖を理由に8名の、計10名の雇い止めを強行しました。うち9名が労働審判で闘い8名は和解が成立。1名は労働審判の審議が続いています。また、さらに1名(Aさん)が雇止め撤回をめざし裁判でたたかっています。」

 関係されました皆様にお詫びし訂正いたします。