phenix246号


救援・復興に航空輸送を役立てよう

運賃・減免・運用柔軟に・国交省・定航協に要請

 3月11日の東北地方太平洋沖地震は津波や原発事故を引き起こし未曾有の大惨事になっています。航空では、仙台空港が津波で水没し約1400人が取り残され孤立しました。羽田空港では激しい揺れのために格納庫で重整備中の航空機が損傷を負い、出発準備中の航空機のドアが装着していた搭乗橋(PBB)とぶつかりドアがもぎ取れる被害もありました。

 この地震による死者・行方不明者は3月26日現在、12都道県で27000人を超えています。まだ多くの安否不明者もおり、その数は日を追うごとに増えています。
 こうした事態を踏まえ航空連は3月22日、国土交通大臣と定期航空協会に被災地の救援・復興に民間航空輸送を積極的に役立てるよう緊急要請を行いました。

 要請書は、「臨時便・チャーター便の運航は、万全な態勢を築き、安全運航第一に、人や救援物資輸送に遅滞なく努力すること」を求め、「航空会社が相互に協力し、運賃の違いがあったとしても差額等を徴収することなく、他の航空会社への振りかえが可能になるよう、便宜を図ること」、政府は被災者救済の一環とし、「被災地空港への運航については公租公課を免除し、運賃の引き下げを実施する」ことを求め、被災者の利用についてはクレジットカード等の支払いになど柔軟な運用によって被災者に最大限の便宜を図るべきとしています。

 救援にあたっているヘリコプター等の運航支援のために、定期航空会社の運航便の燃料タンクを最大限利用し余積を活用できるよう便宜を図ることも求めています。また、被災地では、常時、放射線量と被爆量を測定することも求めています。

 民間航空機は目的地での給油なしに高速で国土全体の移動が可能であり、広域避難に最も適した移動手段でもあります。「大地震という国難の中、私たち航空労働者は民間航空に求められている輸送力を全力で担う決意」も表明しています。

 申し入れの実効を図るために航空連は、必要な対応を行っていきます。


国交省への緊急要請内容

1.臨時便・チャーター便の運航については、万全な態勢築き、安全運航第一に、人や救援物資輸送が遅滞することなく進むよう、引き続き努力を行うこと。
2.航空各社が相互に協力し、運賃に違いがあったとしても、その差額等を徴収することなく、他の航空会社への振りかえが可能となるよう、便宜を図ること。
3.被害の甚大さにかんがみ、また被災者の救援活動の一環とし、被災地空港への運航については公租公課を免除し、運賃の引き下げを実施すること。
4.被災者の方々の利用については、クレジットカード等の支払いや、身元確認がされた場合の運賃の後払い等による利用等、最大限の便宜を図ること。
5.救援にあたっているヘリコプター等の運航を支援する意味で、現地でのスムースな燃料補給等が困難な場合は、定期航空会社が運航する定期・臨時便の燃料タンクの余積で空輸した燃料が活用できるようにする等、必要な対応策を講じること。
6.原子力発電所の状況を踏まえ、放射線量の測定を常時行い、運航中の航空機が当該空域から退避が必要な場合は、一斉に退避指示が出来るような航空管制の体制を敷くこと。
7.被災地空港においては、常時、放射線量と被曝量を測定し、救援活動や定期便等の維持に従事している関係者の健康維持が図れるよう、万全な体制をとること。


■主な記事から■
・12年4月ANAとANKが経営統合
・JAL不当解雇撤回裁判 第1回裁判
・IAM 解雇争議の支援約束
・官庁交渉で前進をめざします・安全会議
・安全会議だより(33)
・国交省でランプの安全・事故対策検討会
・原発事故が航空にも深刻な影響

12年4月ANAとANKが経営統合

背景に機材計画か

事業計画、先行投資に高い利益目標


 全日空グループの再編が進んでいます。10年7月のエアージャパンとNANA&JPエクスプレス統合に続き、同年10月にはエアニッポンネットワーク・エアーネクスト・エアセントラルの3社を統合しANAウイングスを設立。来年4月には全日空とエアーニッポン(ANK)を統合し新生ANAを設立します。再編の課題と狙いを考えます。
 ANAグループ再編の総仕上げともいうべきANAとANKの統合については、すでに少なくない業務をANAが実施しており、今後の課題は整備部門・客室乗務員・パイロットの教育訓練とセニョリティー(先任権)の調整になると言われています。それぞれの企業によって異なった教育訓練システムを統一するのは容易ではありません。JAL・JAS統合でも大きな課題でした。異なった人事制度の統一は理解や納得を得られなければ不満要因になりかねません。片岡航空連副議長は、「パイロットにとってセニョリティーは重要な問題です。海外の航空会社の合併でも一番問題になるのがセニョリティーなのです」と話します。

 再編の特徴の一つに空港運営体制・職種別運営体制の見直しがあります。従来の考え方を抜本的に見直し、空港運営はグループ会社を含め1空港1社化。整備部門では、従来は違法とされていた受委託の請負労働を、ジョイントベンチャー(JV)方式を採用することで一体運用を進める計画です。しかし運営体制を一体化しても、労働条件の異なる労働者を一つにまとめていくのは簡単ではありません。労働条件の違う人事が、新たな不満を浮き彫りにすることも予想されます。
 ANAグループの伊東CEOは「2011―12年度ANAグループ経営戦略」について、「今後5年間の環境変化を見据え、『環境変化をチャンスと捉え、どう成長に繋げていく』についてグループの方向性を示したもの」とグループ社員向けメッセージで語っています。

 航空連政策委員会は全日空グループの経営戦略について、「首都圏発着枠が2015年までに年間11万回増えることを前提に先行投資型になっている。有利子負債が増え続けるので、年間営業利益を1500億円と今までにない高い利益目標になっている。イベントリスクを警戒しているが、強気の投資計画になっている。機材計画は中型機を増やし小型機(A320型機・B737型機)を退役・売却する計画になっている。ANA・ANK統合はこうした機材計画が背景にあるのではないか。成田では時間あたりの発着枠の拡大が計画されているので、これにどう対応するかが課題になってくる」と分析しています。

職場復帰必ず

原告らが口頭弁論

JAL不当解雇撤回裁判 第1回裁判


 希望退職募集に目標を上回る応募があったにもかかわらず、パイロットと客室乗務員を不当解雇した日本航空。146人が不当解雇撤回、現職復帰を求めた裁判が東京地裁で始まりました。3月3日にはパイロットの口頭弁論が、11日には客室乗務員の口頭弁論が行われました。法廷はともに103号大法廷。支援者や原告席に座りきれない原告で傍聴席は埋め尽くされました。法定外では多くの支援者が見守りました。
 3月3日の法定で意見陳述したのは飯田祐三さん。乗務歴36年の機長です。
 「シンガポール便から帰着し、2日後にフライト予定をはずされた。乗務員資格を失い、解雇で脅して退職強要を受け、絶望感を受けた」と不当解雇を批判しました。
 客室乗務員の法定での意見陳述は内田妙子原告団長。安全のために発言した日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)の組合員は昇格差別を受け管理職になれなかったため、非管理職のなかでは年齢的に上位に位置することになりました。そのことを踏まえ内田さんは、「年齢による人選基準自体がCCU組合員を順番に解雇することを意味し、会社はそのことを画策した」と強調しました。1977年のクアラルンプール事故で同期の仲間を失うなど事故の歴史を振り返り、「私たち客室乗務員は保安要員である責務を胸に刻んで乗務してきました」「勇気を出して発言し、間違いをただし、率先して行動することなし安全運航は守れない。そうした行動をとってきた原告らが解雇された」と解雇の不当性と公正な判断を求めました。
 パイロット裁判で原告代理人の船尾徹弁護士は、日本航空が昨年12月までに1586億円もの営業利益を上げたこと、稲盛和夫会長が「160人を残すことは経営上不可能ではない」と発言していることを指摘し、経営上整理解雇の必要性は存在していないことを強調しました。
 客室乗務員裁判では安原幸彦弁護士は、日航の破綻原因は政治的圧力で航空機を購入させるなどゆがんだ航空行政と放漫経営にあること、労働者の人件費は国内外の他社と比較しても低いことなどを指摘し、解雇の不当性を追及しました。
 日本航空の不当解雇問題は、「整理解雇4要件」をめぐる労働側と経営側のするどい対決点となっています。原告団への支援は全国的に大きな広がりをみせています。
 次回裁判は4月18日です。
 
◆日航乗組とCCUの争議権投票をめぐる不当介入問題で、両労組が東京都地方労働委員会(都労委)に申立てていた不当労働行為救済申立事件は3月18日に結審しました。


世界の航空事情

IAM 解雇争議の支援約束

東日本大震災にお見舞い

 JAL解雇問題は海外でも注目されています。
 航空連は組合アライアンスを締結しているIAM(国際機械工・航空宇宙産業労働組合)への要請を兼ね3月13日から5日間の日程で米国ワシントンを訪問しました。訪問団は近村議長、和波事務局次長、山下顧問(国際委員会担当)、浜島国際委員会アドバイザー。訪問先ではIAM会長や米民主党議員らから大震災へのお見舞いが寄せられました。
 IAM本部で行われた会談で航空連は、JAL解雇問題の経緯と現状、ILOへの申し立てなどについて説明し、山口前議長のビデオレターを手渡しました。
 IAMのローチ副会長(航空担当)は「ILOへの取り組みについては全面的に協力する」「(JALが)多くの組合幹部を解雇したことは違法行為である。これを放置すれば世界中に蔓延する。決して許されない」と厳しく批判しました。山口議長のビデオレターは「IAMのホームページに掲載し全国に配信する」と語りました。
 政策担当のハーンシュタット氏は、「IAMとしてこの(JAL解雇)問題に対し、支援を行う一環としてILOへの取り組みをサポートする」と述べました。
 バッフェンバーガーIAM会長は、「日本で起きた惨事に心からお悔やみを申し上げます。解雇の件についてはIAMでできることは何でも言ってほしい」と語りました。
 米民主党オバスター議員からは「日本の惨事に対するお悔やみを申し上げます」とお見舞いの言葉がありました。
 IAMは東日本大震災と原発事故に伴い、日本の友人達に人道的支援を行いたいとして、救援物資を携えた運輸部門の代表団を成田に派遣するとしています。

官庁交渉で前進をめざします・安全会議

 人員削減・合理化で航空安全がピンチ

 今年度は日本航空の経営再建問題に端を発した、効率化・合理化の名の下に行われている人員削減や安全問題を取り上げています。また政権交代で健全な法整備を期待していましたが、昨年の要請では逆に様々な事業の予算縮小により新規施設整備や人員配置が難しいとの答弁が増えたことから、今回の要請ではこれらの要素を踏まえ有効な対応を求めます。
 航空行政では、すでに実用化されているUAV(無人航空機)が民間航空機への障害にならないよう、IFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会)の指針に従い法整備を行うことを要請。増加している空港制限区域内事故の調査については、処分を前提としない原因調査の方法を早急に取りまとめることを盛り込んでいます。
 遅々として進まない事故調査体制は、前原元国土交通大臣の発言の通り「事故の原因を全ての段階で明らかにしていく事故調査の実現を」早急に実現するように要請。
 運航乗務員の分野では、日本航空で体調不良による休業が退職勧奨や整理解雇につながったことから、今後は体調に不安を抱えながら乗務に就くことが大いに考えられることについて当局の見解を求めています。
 客室乗務員についても、機内の安全確保を無視したドアの数を下回る客室乗務員数での運航の是正や十分な休憩を取れないままの労働基準法に違反した連続したスケジュール、それをさらに悪化させるような機内清掃業務の追加について、安全を確保するために会社を指導することを要請しています。
 管制関連では、過密な羽田空港周辺において出発機と到着機が非常に近くを擦れ違うことへの改善。進入してくる航空機を整理するために行われる遠距離からの減速指示と高度指示の改善。不慣れな外国エアラインによる事故を未然に防ぐために、ランプインスペクションの内容の充実や外国運航乗務員の知識付与状況を再確認することなどについて言及しています。
 東北地方太平洋沖地震発生により、3月24日に開催予定の臨時総会は中止されましたが、航空安全会議では、例年通り「民間航空の安全確保に関する要請書」を作成し当局に要請する予定です。交渉については、状況を見ながら判断することとしています。

安全会議だより(33)

気象観測は専門家の手で

天候急変にも即座の対応を


 SCAN報とは、航空気象観測所が設置されている空港において、その空港を利用する航空機の運航に合わせて地方公共団体等が気象観測を行い、最寄の基地気象官署から通報される気象通報式、いわゆる委託観測です。
 ここ数年、松本空港や三宅島空港での気圧の通報ミスや北大東空港での風向の通報ミスなど、航空気象観測報でもミスがあり、観測精度の信頼性を著しく低下しています。特にSCAN報は航空気象観測の専門家でない者により観測が行われていることから、観測データの信頼性を確保するため、通報前に基地官署でデータのチェックを行っているのが実情です。
 航空安全会議鹿児島支部のアンケートには「天候の急変に対して即座に対応していないので運航の面で不安を感じる」「細かいデータを知ることができないことにSCAN報の問題点がある。隠岐の凍雨など観測の制度は、確実に低下している」「VMC(有視界気象状態)で進入を開始したが実際には、天候が急変しており、BLW(着陸に必要な最低気象条件未満の気象状態)であった」「沖永良部でBLM(前項参照)なため手前で上空待機していたが、実際には天候が回復していた。しかし、新しいデータがなかなか出ず、進入できないまま20分ほど待った」などあり、精度のみならず、委託観測にも運航乗務員は不安を感じています。
 航空安全会議は、観測精度の信頼性は航空気象の根幹であり航空安全には欠かせないと考えています。気象の専門家でない者による観測の質の向上はあり得ないとも考えています。
 航空気象の専門家である気象庁職員による観測を本年度も要請します。

SCAN報を実施している空港

奥尻      利尻
佐渡      新島
神津島    三宅島
福井      隠岐
壱岐      小値賀
上五島    屋久島
喜界      徳之島
沖永良部  与論
粟国      久米島
慶良間    北大東
南大東    多良間
波照間    与那国

国交省でランプの安全・事故対策検討会

羽田空港で事故増加、改善を

 8年前に国会で空港内ランプにおける安全問題が論議されたのを契機に、国交省に設置された空港制限空域内事故防止対策検討会が3月2日、国交省で開催されました。検討会ではグランドハンドリング(地上支援業務)の事故発生率が高いこと、特に羽田空港国際線化に伴い今後の事故増加が懸念されるとしています。航空安全会議・航空連・航空連合の代表者がオブザーバー参加しました。
 検討会の主な議題は@平成21年下期平成22年上期制限区域内事故発生状況APBB(旅客搭乗橋)タイヤガード設置状況B制限区域内事故報告フォーマット変更C東京国際空港事故発生状況。
航空局の説明資料などによると、2004年以降増加傾向だった事故は08年289件、09年243件と減少したものの、10年は横ばいとのことです。空港別では、09年は成田52件(重大事故2件)、羽田33件(同8件)、中部30件(同2件)が上位3空港です。10年上期は成田28件(同2件)、羽田26件(同3件)、中部12件(同0件)と羽田空港の増加傾向が伺えます。事故発生の時間帯では、羽田が07時・17時・20時台、成田が09時・16時・20時台です。類似事故が多いとの指摘もありました。
 航空局は羽田空港の施設や便数増加による事故増加が考えられることから対策が必要として、重点調査を行うことを明らかにしました。対象は車両事故と人身・航空機損傷事故です。
 PBBタイヤガードの設置状況は、全国55空港620基に対して59基であることが報告されました。今後も設置していくとのことです。
 航空連からオブザーバー出席した白石幹事は、「事故の背景には人員不足やスキルの低下など複合的な要因があるが、ともすれば個人責任ですまそうとの風潮も強まっている。局も現場実態を知りたいとの考えがあるようなので、航空連としても生の実態を局に伝えていきたい」と語ります。航空連は4月中を目処に航空局との意見交換を予定しています。

原発事故が航空にも深刻な影響

 福島原子力発電所の事故は航空にも深刻な影響を与えています。新聞報道によると原発事故により外国人が日本国外に退避する動きが急速に強まっています。3月19日の時点で自国民に退避を求めている国や地域のうち米国では、福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告、チャーター機で100人が台湾へ退避、外交官らの家族600人に退避許可、軍人の家族2万人の国外退去支援が出されています。そのほか、英国・フランス・イタリアなど20カ国以上の国が日本からの退避勧告が出されています。こうした状況下でスターフライヤーでは外国人機長が日本に戻らず便が欠航する事態にもなっています。原発事故は、航空の運航にも深刻な影響を与えつつあります。


ページ先頭へ 前へ 次へ ページ末尾へ